PRODUCTION NOTES

進化した「シン・シティ」いよいよ新章スタート

2005年、“究極の刺激”と激賞された前作『シン・シティ』ですら、序章に過ぎなかった――。
「バットマン」シリーズや「300<スリーハンドレット>」の原作者フランク・ミラーの伝説的グラフィック・ノベル「シン・シティ」から最も人気の高いエピソード2話「A Dame To Kill For」と「Just Another Saturday Night」、そして新たに書き下ろした2話「The Long, Bad Night」、「Nancy’s Last Dance」で構成されたのが『シン・シティ 復讐の女神』だ。救いなど存在しない罪の街で、愛する者を殺されたナンシー、そして大切なものを奪われたアウトサイダーたちによる、腐敗した権力への壮絶な復讐劇が描かれる。
前作公開より9年の歳月を経て、全編グリーン・バックで撮影された本作は、疾走感あふれるアクション描写と、光と影を彩る鮮烈な色彩に目を見張るクールな映像美はそのままに、魂を揺さぶる男と女の熱きドラマに重きが置かれ、前作を軽々と凌ぐ超娯楽作へと進化を遂げた。

“復讐”をテーマに!選ばれた2つの原作人気エピソードと2つの書き下ろし

本作には4つのエピソードが用意された。各エピソードは直接的な絡みはないが、“ケイディー”というストリップバーを拠点に、出来事が細い糸で巧みに繋がり、観る者がまるでひとつの物語を地続きで観ているような感覚に陥らせる類まれなる構成になっている。両監督はまず、マーヴが主役のエピソード“Just Another Saturday Night”を冒頭に置き、全体のトーンを決定づけた。次に、原作ファンに最も人気の高い“A DAME TO KILL FOR”の映像化を決定。前作の人気キャラクター、ドワイトを再び登場させることができ、かつ魔性の女エヴァ・ロードが両監督の大のお気に入りだったからだ。
さらに本作では、ファンへのサプライズとして、ミラー描き下ろしの2つの新エピソードを盛り込むことになった。1つは、傲慢な若きギャンブラー・ジョニーが登場する“The Long, Bad Night”。そして物語を最高潮に盛り上げるラストのエピソードに、前作の“イエロー・バスタード”のその後にあたる“Nancy’s Last Dance”を描き下ろした。
ケイディに集う、大切なものを奪われたアウトサイダーたちの憎しみはやがて頂点に達し、激烈な“復讐”が始まる。

世界観を決定づけた3D視覚効果

『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』で3D映画制作に実績のあるロドリゲス監督は、前作『シン・シティ』を上回る斬新な映像表現を3Dに求めた。「独特で、クオリティの高い美しいモノクロ世界を持つ原作「シン・シティ」こそが、3Dに最も適する素材であり、観客はまるでコミックの中にいるかのような錯覚に陥るだろう」と自信をのぞかせる。これまでの数作品をアレクサ・カメラ<ARRI社製デジタル・シネマ・カメラ>で撮影、その機能に精通する彼は、ペース社製3Dシステムにそれらを応用し、原作コミックの世界をより鮮明に浮き彫りにすることに成功した。

作らない?!美術が見せた新たな境地

スティーヴ・ジョイナーとケイラ・エドルブラットが率いる美術チームは、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』以来、ロドリゲス監督と一緒に仕事をしている。前作では、たとえグリーン・バックの撮影であっても、ケイディの店を含め、いくつかのセットは設営されたが、本作で作られたセットは、役者が演技をする上で最低限必要な入退室のためのドア、階段、テーブルやイスなどの小道具だけであった。原作コミックを絵コンテ代わりにし、セットのどの位置で演技しているかを把握しやすいよう、各セットの3D模型を作った。ジョイナーは語る。「僕等は原作コミックをお手本にして作ったセットの模型を持って動き回っていたんだ。ロドリゲス監督が独特な方法で照明をあてるから、スタジオには壁すら置かないこととなり、位置関係が把握できなくなるからなんだ」。エドルブラットは語る。「模型は照明の面だけでなく、1シーンを数カットに分けて撮影しなくてはならない時に、セット模型があると継続性が保たれるの」

原作の世界観を発展させたコスチューム・デザイン

本作の衣裳は、ロドリゲス監督と9作目となるニナ・プロクター。ミラー監督は彼女に全幅の信頼を寄せ、原作に囚われない自由なデザインを勧めた。「彼女のひらめきは素晴らしい。私は描きながら、登場人物の衣裳イメージを膨らませていくが、彼女にはイメージを伝えるだけで、想像以上のデザインがあがってくるんだよ」。一方、プロクターは「原作コミックの劇画を絵コンテとして使用したの。とにかく彼の描いた服のシルエットに忠実なデザインを心がけたわ。モノクロ映像における衣装の質感や色彩の効果について学ぶところが多かった。生地や素材についてモノクロの世界をベースに研究を重ねたわ。私の仕事は、衣装に陰影や質感を与え、命を吹き込むことだったの」と語る。彼女が特に注力したのは、本作の象徴的な2人の女性、ナンシーとエヴァの衣裳だ。「ナンシーの衣装はジェシカと1カ月半ほど一緒に考えたわ。彼女がダンスシーンの使用曲を事前に教えてくれたから、感情を汲み取りやすかったわ。動きの出る衣装を何着か手がけ、そのうちの1つが、華やかに揺れる羽の付いたレザーを使用した服よ。最終的にはレイヤーを増やしたの。そのほうがカラー撮影後に3Dシステムによってモノクロに変換された時に効果的に映るからね。エヴァの衣装については官能的な美しさが感じられる1940年代を彷彿とさせるものを着せたいと思ったの。ただしシン・シティは時代を超越した世界だから、それだけではダメ。原作でのエヴァの服は独特だったから、私はそれを忠実に守りたかったのよ」